革製品の魅力に迫る。種類とそれぞれの特徴とは
財布や時計、鞄に靴など、革製品は私たちの身近なところにたくさんあります。
しかし、一口に革と言っても様々な素材の革があります。
今この記事をみている方は、自分が持っている革製品は何の革なのかご存じですか。
また、どういう特徴のある素材かご存じでしょうか。
今回はそんな革に着目してみたいと思います。
本革
皆さんが革製品と聞いてまず思い浮かべるのは何の革でしょうか。
おそらく大半の方が動物の革、所謂「本革」を想像されたかと思います。
では本革には主にどんな種類、そしてどんな特徴があるのか見ていきましょう。
皮から革へ
画像:https://goto-leather.co.jp/leather-process2
もちろんのことですが、動物から採った皮はそのまま使われているわけではありません。
「鞣し」という工程を挟むことにより、皆さんの手元に届く革製品の素へと変化するのです。
鞣しの方法にも数種類あり、鞣し方が変われば、革の特徴も変わってきます。
鞣しの種類
渋鞣し(ベジタブルタン二ン鞣し)
食部樹脂から抽出した渋液(タンニン)を使った方法で、古くから伝わる伝統的な鞣し方です。
ハリと強さのある質感になるのが特徴的で、またズッシリと重く、固くなります。ただし、水には弱くなります。
長年使っていると経年変化で独自の風合いとフィット感を楽しむことができるようになります。また、染色も楽しむことができます。
適度なメンテナンスが必要になるため、渋鞣しで作った製品は高価になりますが、逆に言えば、メンテナンス次第で一生物として使い続けることができる物を作ることができます。
クローム鞣し
主成分の硫酸クロムを使って科学的に鞣す方法で、現在最もポピュラーな鞣し方です。
軽く、伸縮性に仕上がるのが特徴で、耐水性がしっかりします。
また、タンニンと比べ生産が容易なため、安価で作ることができます。
ただし、渋鞣しのように経年変化を楽しむことはできないため、クローム鞣しで作った製品は最初のサイズ選びを慎重に行わなければいけません。
コンビネーション鞣し
上記の2つの鞣し方を掛け合わせた方法で、混合鞣しとも言います。
クロームで鞣した革に渋液を投入させることで、2つの長所を引き出す鞣し方なのですが、メーカーによって仕上がりが異なり、クロムと変わらない様な革が仕上がることもあれば、タフネスさと風合いを兼ね備えた完成度の高い仕上がりになったりします。
アルデヒド鞣し
クロムは処理する際に有害物質を出してしまうのですが、そのクロムを使わないことにより、環境に優しく鞣し作業ができるとして近年注目を浴びている鞣し方のひとつです。
クロム以上に柔軟性のある仕上がりにはなりますが、コストや生産性面からみてクロムに劣る部分があるため、まだまだポピュラーな鞣し方ではありません。
主にこの4つの鞣し方により、動物の皮から本革へと加工されます。
では今度はそれぞれの素材の魅力を紹介していきます。
牛革
牛の革は革製品の中でも一番使われている革素材です。
仕上がりが美しく丈夫なことが大きな特徴です。
牛革は、主に8種類に分類され、採る年齢によって呼び方が変わり、価値も変わってきます。
主に使われているもの
ベルト、靴、ベット、家具など
ハラコ
画像:https://olortitularfollo.top/index.php
母牛のお腹の中で死んでしまった子牛や、出生後すぐに死んでしまった子牛の革のことです。革の面積が少ないため、希少価値は高く、ハイブランドなどに使用されます。
カーフ
画像:https://io-shoes.jp/posts/1013332834/
生後6カ月以内の仔牛の革です。乳牛種の牡が大半を占めていて、生後間もない牛から採るため、傷が少なく、表面が滑らかで繊維も細かく柔らかいのが特徴です。特に生後3カ月以内の仔牛の革であるベビーカーフといい、カーフよりも厚みが薄く、キメ細やかであるため、高級革製品の材料として使われています。
キップ
画像:https://m-wallet.tokyo/kip/
生後6カ月から2年までの牛の革を指します。
カーフに比べて滑らかさは劣るものの、革が厚く強度があるため汎用性が高く、高級品の中では手ごろな材料とされています。
ステアハイド
画像:https://www.porco-rosso.co.jp/c/column/wiki/wk-06
生後3カ月から6カ月の間に去勢され、生後2年以上経っている牡牛の革です。表面のキメ細やかさはキップと似ています。
流通量が多く幅広い革製品に利用されている、最もポピュラーな牛革だといえます。
ブルハイド
画像:https://blog.phoenix-shop.jp/archives/19360
去勢していない3歳以上の雄牛の革です。
争いで受けた傷などが多く、ラグジュアリーな高級品には使用されません。
しかし、厚くて丈夫な革は耐久性がある為、質実剛健なタフネスギアに使われています。
カウハイド
画像:https://jamingu.com/entry/leather/
出産を経験した生後2年以上経っている牝の成牛の革です。厚さや強度などにおいて、キップとステアハイドのほぼ中間ともいえる特徴をもちます。
成牛であるため、比較的大きな面の革が取れ、大型の鞄やジャケットなどに使用されることが多々あります。
ブライドル
画像:https://www.somes.co.jp/blog/31446/
カウハイドに強度を持たせるために、数か月間、(ベジタブル)タンニン鞣しを施した上で、ロウをしみこませた革のことをいいます。
バッファローハイド
画像:https://jamingu.com/entry/leather/
水牛の皮から作られたものです。
丈夫で柔らかく加工がしやすい為、様々な製品に利用されます。
水にも強い優秀なレザーです。
豚革
画像:https://www.photo-ac.com/main/detail/24850565#goog_rewarded
日本国内で一貫して飼育から皮革製品までのすべてを生産できる唯一の皮革で、海外にも輸出されています。
豚革の表面に三つずつ並んだ毛穴は、優れた通気性をもたらすため、靴の中敷に利用されることも多々あります。
主に使われているもの
靴、バッグ、ウェア、小物など
ピッグスエード
画像:https://jamingu.com/entry/leather/
毛穴が目立ってしまう豚革にスウェード加工を施したピッグスエードは主にカジュアルシューズなどにも使われています。
他にも手袋や小物に利用される人気の高い加工です。
馬革
画像:https://www.photo-ac.com/main/detail/2069278#goog_rewarded
繊維構造が粗く全体的に薄いため、牛革に比べて強度は落ちてしまいます。しかしその分柔軟性があるため、昔から衣料製品に用いられることが多い。
主に使われているもの
靴、バッグ、ランドセル、小物など
コードバン
画像:https://jamingu.com/entry/leather/
重量馬の臀部で作られた革のことを指し、空気も水も通さないほど繊維が緻密で硬く光沢が美しい稀少な高級素材として重用されている。
羊革
画像:https://jamingu.com/entry/leather/
毛穴によるキメが細かいため、薄くて柔らかいことが特徴。しかし繊維が粗いため、強度が必要な革製品にほとんど利用されることはない。
主に使われているもの
ウェア、帽子など
鹿革
画像:http://www.tanigawa17.com/leather/info_leather/deer_leather.html
柔らかく、耐水性に優れていることが特徴です。日本では古くから武具や衣類に使われてきました。
また、植物油で鞣したものは「セーム革」と呼ばれ、水分を吸収しやすくはなりますが、硬くならず、伸びても元に戻る性質があるため、レンズや自動車磨きにも使用されています。
主に使われているもの
ウェア、手袋、武具、拭きものなど
山羊革
画像:http://www.tanigawa17.com/leather/info_leather/goat_leather.html
おとなの山羊から採った革のゴートスキンは、強度に優れ緻密な繊維をもちますが薄いのが特徴です。柔らかいが丈夫で型くずれしにくい点も特徴です。
仔羊の革のキッドスキンはゴートスキンに比べてさらに薄くて軽く、高級靴や手袋、衣類などに用いられています。
主に使われているもの
靴、ハンドバッグ、ウェア、手袋など
トカゲ革
画像:https://www.nuno100.com/product/3978
爬虫類の中でも、ポピュラーな素材であるトカゲ革は「リザード」と総称され、比較的強度があるため様々な用途で使われています。
リングマークリザードは、トカゲの中で最も大きく革質も丈夫であり、最上級の品とされています。ウロコにリングの模様があるのも特徴です。
また最近では、この模様をあえて薬品処理で除去して利用した革もあります。
主に使われているもの
ハンドバッグ、小物、時計バンドなど
ヘビ革
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ヘビの中でもパイソン(ニシキヘビ)が、主に利用されています。全身に美しい斑紋のあることが理由です。
中でも菱形の模様をもったダイヤモンドパイソンの人気はとても高いです。
他のスネーク類もウロコ模様の違いに応じて活用され、バッグ、小物、ブーツやジャケットなど、ファッション性の高い製品に使われています。
主に使われているもの
ハンドバッグ、小物、ブーツ、時計バンドなど
ダチョウ革
画像:https://gaslwd.jthrowjqk.top/index.php
オーストリッチレザーとして用いられるのは、羽を抜いたあとの皮は丸く突起しており、これが独特の美しい模様となって珍重されています。革質も丈夫で柔軟性があり、ワニ革と並ぶ高級素材として幅広く利用されています。
主に使われているもの
ハンドバッグ、ウェア、小物、ベルトなど
ワニ革
画像:https://www.photo-ac.com/main/detail/25146546#goog_rewarded
背の部分をカットし腹部の独特のウロコ模様「腹鱗板」を活かした「肚(はら)ワニ」と、背の大きなウロコを活かした「背ワニ」があります。
革の表情が豊かなことが特徴で、ウロコの模様が整ったクロコダイルがポピュラーです。
主に使われているもの
ハンドバッグ、小物、ベルトなど
本革はこんなにも種類があり、特徴も様々です。
しかし、実際に生きている動物から採る本革はどれもとても貴重で、ずっと採れる物ではありません。
そのため人工で作られた革製品も存在します。
次はそちらの紹介をしていきます。
人工皮革
人工皮革は1964年に株式会社クラレが開発した「クラリーノ」から展開していったナイロンやポリエステルのようなマイクロファイバーを基に、合成樹脂でコーティングした人造皮革のことです。
人工皮革には本革のように艶のある「銀面タイプ」と起毛した「スエードタイプ」の2種類があります。
銀面タイプ
画像:http://www.youlove.co.jp/ginmen-soft8mm.html
こちらのタイプの大きな用途としては、ランドセルや靴などがあります。
人工皮革は軽くて丈夫で手入れが簡単という特徴があります。
そのためランドセルのような6年間使い続けるような代物や、耐久性が要求され、足の馴染む質感なども重要視される靴、特にランニング用などのスポーツシューズなどにとっては、得意分野といえる人造皮革です。
近年、スポーツシューズのカラーバリエーションや、デザインがオシャレになったりしているのは、人工皮革のシェアが高まり、製造の自由度が向上したことの表れとも言えます。
スエードタイプ
画像:https://item.rakuten.co.jp/youlove/new-solty-122-2/
スエードタイプの主な用途は、軽量性や手入れが簡単な衣料品、インテリア、自動車用シートなどです。
染色のしやすさや、デザイン面でも人工皮革の特徴を生かすことができます。自動車は世界各地で販売台数を伸ばしていますので、人工皮革もグローバルにブランド価値を訴求することが必要です。
これらの用途に加え、人工皮革の新しい用途開拓も進んでいます。
その一つとして近年取り上げられているのが産業資材分野で、機械内部に埃を入れないようCD挿入口についているCDカーテンなどがあります。
合成皮革
ナイロンやポリエステル生地の上に樹脂層をコーティングして作られた人造皮革です。
生地は編み物や織物がベースとなっており、その上からコーティングをしています。
模様などは天然の皮革に限りなく寄せて作られた物です。
人工皮革と比べてフィット感、グリップ感が強いのが特徴的です。また、安価で素材も手に入るため大量生産がしやすいというのも魅力の一つです。
まとめ
本革は高級なこともあり、持っているだけで一つのステータスになったりしますよね。
安価で手に入り、耐久性や防水性に長けた人造皮革、高級感があり、経年変化などで長期に渡って楽しむことのできる本革。
あなたはどちらの革製品を選びますか。